2026年9月1日

口腔ケアが全身をまもる?

澁谷 英伸 歯科医師(歯科副部長)

「毎日の歯みがきは、虫歯や歯周病を防ぐためのもの」そう考えている方は多いのではないでしょうか。

しかし、近年の医学研究により、口腔ケアは単にお口の中をきれいにするだけでなく、全身の健康を守るための最も手軽で強力な予防医学であることが分かってきました。

お口の中には数百種類、数千億個もの細菌が存在しています。ケアが不十分になると、歯垢(プラーク)や歯周病菌が増殖します。この菌や炎症によって生じた物質が血液を通じて全身をめぐったり、気管から肺へ侵入したりすることで、全身のさまざまな悪影響を引き起こします。

口腔ケア不足が招く主な全身リスク

糖尿病の悪化

歯周病による炎症物質が血液に入ると、血糖値を下げるインスリンの働きを妨げ、糖尿病を悪化させます。

誤嚥性肺炎

唾液や食べものが誤って気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」。お口の中に細菌が多いと、その細菌が肺に届いて「誤嚥性肺炎」を引き起こします。

脳卒中・心筋梗塞(血管のまり・動脈硬化)

歯周病菌が血管内に入り込むと、血管壁に炎症が起こり、プラークを形成して動脈硬化を促進します。これによりリスクが高まることが知られています。

他にも、認知症(アルツハイマー病)の進行に関与している可能性や妊娠中のリスク(早産や低体重児出産)等が指摘されています。

今日から始める!効果的な口腔ケア

歯ブラシ・フロスの併用

歯ブラシだけでは、お口の中の汚れの約60%しか落とせません。フロスや歯間ブラシを併用することで、除去率は80%以上にアップします。

「舌みがき」で細菌を減らす

舌の表面につく白い苔状の「舌苔(ぜったい)」は細菌の温床です。1日1回朝に専用の舌ブラシで優しく撫でるようにケアしましょう。やり過ぎは舌に傷がつき良くありませんので注意が必要です。

寝る前の丁寧なケア

睡眠中は唾液の分泌が減少し、お口の中の細菌が爆発的に増加します。

定期的な歯科検診・プロケア

自分で落とせる汚れには限界があります。3~4ヶ月に1度は歯科医院で歯石除去や専門的なクリーニングをうけましょう。

おわりに

毎日の丁寧な口腔ケアは、将来の重大な病気を未然に防ぐ「全身の予防医療」そのもの

なのです。

特に障害者(児)さんは嚥下機能が低下している傾向をお持ちの方が多く、舌や口腔の筋の

動かし方が苦手な方もたくさんいらっしゃると思います。毎日の口腔ケアは口腔内の

細菌を減らす目的だけでなく、口腔内のコンデション訓練にも繋がります。

つまり、口腔ケアは生活の質(QOL)維持の基本と考えてよいでしょう。

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