2023年8月21日

当センターの整形外科について

則竹 耕治 センター長

これまで脳性麻痺、二分脊椎、筋ジストロフィーなどの種々の神経・筋疾患や先天性股関節脱臼、先天性内反足、O脚、X脚、筋性斜頸、歩容異常(歩き方の異常)など主に子どもの整形外科的治療を行ってきました。2016年、旧第二青い鳥学園が新築移転され当センターが開所しました。開所後、成人の脳性麻痺、二分脊椎、他の神経・筋疾患による麻痺性足部変形、股関節脱臼などの手術も行っています。種々の疾患の中で、当科の受診者、手術を受ける方は脳性麻痺の方が多いので脳性麻痺の治療について紹介します。

乳幼児期の治療:
運動発達の遅れ等の症状やMRI等で脳室周囲白質軟化症等の異常を指摘されて紹介されてくることが多い。四肢、体幹の筋の過緊張(痙縮)に対して、理学療法(上田法)を開始します。当センターでリハビリを受けつつ、同時に訪問リハビリなどもうけることができます。筋の過緊張は徐々に増強することが多く、下肢の装具の治療や2歳以降は筋肉のボツリヌストキシン注射を行います。筋肉の緊張を和らげ、動きやすくすることが目的です。

就学期の治療:
筋の過緊張(痙縮)に対するリハビリやボツリヌストキシン注射にもかかわらず、年齢が進むと筋の拘縮(硬く短いこと)が進みます。例えば、つま先歩行(尖足)が進行し、装具をつけても踵歩行が困難になります。初期(軽度)の尖足拘縮に対しては、3週間程度の矯正ギプスを単独またはボツリヌストキシン注射と併用し行っています。これは長期間にわたり筋の機能を維持したり、将来の手術の可能性を減らしたり、手術時期を遅らせることが目的です。

これらの治療にもかかわらず、下肢の拘縮や下肢骨のねじれの変形、足部の変形が進むと歩行障がいも同時に進みます。これらを改善するために、整形外科手術を行っています。

令和2,3,4年度はコロナ禍でありましたが、当科の年間手術件数は90人ほどです。このうち1/3は脳性麻痺の手術です。当科の手術の特徴は、歩行可能な子どもには、術前後に三次元歩行分析を行い、科学的に手術適応を決めたり、手術後の評価をします。我が国では、三次元歩行分析の専門の常勤のスタッフがいて、ルチーンの検査として行っているのは当科のみです。下肢の拘縮は多部位に及ぶことが多く、一度の下肢の筋の多くの手術を行います(多関節レベル手術と呼びます)。同時に、下肢の骨の変形(内旋歩行に見られる大腿骨か下腿骨のねじれ変形)と足部変形(外反扁平足)に対して大腿骨骨切り術や踵骨延長術を行っています。多関節レベル手術において骨手術も同時に行っているのは国内ではごく少数の施設のみであり、骨手術を伴う多関節レベル手術症例数は国内第1位です。当科の年間90名程度の手術件数(人)ですが、手術箇所で言えば、かなりの手術件数(手術の数)になります。
また歩けない児の股関節脱臼では、両側同時の大腿骨骨切り術などを行って、手術回数を減らすようしています。

成人期以降の治療:
この数年、徐々に手術を希望される方が増えています。歩行できる方は、足部変形から生じる足部痛に対して足部の骨切り術や関節固定術、腱移行術を行っています。手術を行った最高齢は64歳です。歩行できない方は、重度の股関節内転拘縮に対する股関節周囲の筋・腱延長術です。
当科では乳児期から老齢期までのすべての方々を、より質の高い生活が送れるよう支援したいと考えています。

  • 愛知県青い鳥医療療育センター
  • 愛知県済生会リハビリテーション病院
  • 社会福祉法人 恩賜財団 済生会